1 二度目の再会は突然に

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1 二度目の再会は突然に

 午前の出勤ラッシュが終わった頃、平日休みの私は、息子を連れて羽田空港にやって来た。  息子の大好きな、飛行機を見るために。  今は五月。春の暖かな日差しが、空港の広い窓から差し込んでいる。 「ママ、早く早く!」  月に一度は来ているから、息子の飛行機の見えるデッキまでの足取りは二歳半とはいえ早い。  一方、ベビーカーを押す私はそんな息子を追いかけるので精一杯だ。 「花斗(はなと)、ちょっと待ってよ」  お気に入りの飛行機のおもちゃを片手に、先を行く我が息子が振り返って私を呼ぶ。 「ママ、遅い!」 「あ、こら! 前を見なさい!」  言うが早いか、  ──ドンッ!  花斗は見事に目の前にいた男性の、ネイビーのズボンにぶつかっていた。 「ひ、は、ふ、うえーん」 「わー、ごめんなさい!」  慌てて遠くからそう叫ぶと、男性はしゃがんで花斗に目線を合わせた。 「大丈夫か? 坊主」  白い半袖シャツに黒ネクタイ、金色の刺繍のロゴが入った紺色の帽子。  肩についている黒地の布には4本の金色のライン。  爽やかスマイルを浮かべた彼は、白い手袋をした手で花斗の頭をポンポンと撫でた。  すると花斗の涙は引っ込んで、代わりにキラキラとした視線がその男性に注がれる。  やっと追いついた私は彼に頭を下げたけれど、花斗は自分が引っ込み思案なことも忘れて、目の前の男性を見つめていた。 「おにいさん、パイロットさん?」 「ああ。……あ、これ」  彼は足元にあった花斗の飛行機のおもちゃを拾い上げる。 「落としたぞ」  それを受け取った花斗の顔に、ぱぁっと笑顔の花が咲いた。 「すみません、この子、パイロットに憧れてて」  その場を離れない花斗を彼の前から引き剥がし、張り付けた笑顔を彼に向けた。 「いえいえ、こちらこそすみませんでした」  そう言ってパイロットさんは立ち上がると、帽子を外して前髪をかきあげる。 「……壱月(いつき)?」
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