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今日は、夕飯を壱月と二人で準備した。
なんでもしてもらうだけというのは、気が引けたから。
花斗は自分の椅子が出来たのがよほど嬉しいのか、ずっとそこに座っている。
ダイニングテーブルの上で飛行機のおもちゃを行ったり来たりさせて遊んでいる。
「愛音、思ったより手際いいな」
「そりゃそうでしょ、今まで花斗の分も作ってたんだから。花斗が不機嫌になるまでに作らなきゃだから、時短が第一」
「なるほど」
そう言いながら、壱月はコロッケを揚げている。
この人はコロッケまで作ってしまうのか、なんて感心していると、ちょうど最後のひとつがあがったらしい。
油のじゅわじゅわという音が消え、代わりに香ばしいじゃがいもの匂いが漂ってくる。
「なんだよ、じっと見て」
「いや、美味しそうだな~って」
壱月はケラケラ笑って、揚げたてのそれをひとつ、紙に包んでこちらに向ける。
「食えば? 味見」
そう言われて、差し出されたそれにかぶりつく。
サクっ、ほろっ、じゅわぁ~。
「ん、美味ひい~」
「だろ? 愛音の味噌汁も美味そうだけどな」
「……食べる?」
そう言うと、「うん」と短く答えた壱月は腰を折って私の方に顔をつきだし、口を大きく開いた。
え!? 味噌汁を!?
考えた挙げ句、人参をひと切れ箸でつまんで彼の口に放った。
「あっつ!」
「わ、ごめ……」
言いかけて、固まった。
いつからそこにいたのか花斗と視線があったのだ。
「いつき、あーんしてた!」
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