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7 甘やかされて傷付いて
それから三日が過ぎた。
仕事が休みの今日はぐうたら朝寝坊でもしようと、目覚ましも鳴らさず布団に潜っていると、お腹の上にドスンと体重がかかる。
「こらー、ママー、起きろーーっ!」
「うっ……」
低反発のマットレスは一瞬背中から沈み込み、ゆっくりと私の体を押し上げる。
マットレス、最高っ!
覚醒しかけた脳はもう一度スリープ体勢に差し掛かり、掛け布団を頭から被り直す。
けれど、それは小さな手によってズルズルと剥がされてしまった。
「ママー! ダメーー!!」
口を開けば「ダメ」しか言わないんだから、と心の中で唇を尖らせながら、欠伸をこぼしつつ身体を起こす。
「おはよう、花斗」
「起こしてくれてありがとう、は?」
「はいはい、ありがとう、ね」
「『はい』は一回だよ!」
「はい」
一通りいつものやりとりをして満足げに微笑んだ花斗は、「早くごはんー!」とリビングへ駆け出した。
朝食を適当に済ませた後、花斗は今日も大窓にへばりついて、外を眺めていた。
「いつき、いつ帰る?」
ああ、またそれか。この三日間、そればかりを聞かれたのだ。
「あの飛行機、いつき?」
そんなこと、知らない。
けれど。
「今日、帰ってくるよ」
「ほんと? わーい!」
花斗はピョンピョンとソファの上で跳び跳ねる。
同じように、私も少しだけ心が軽いのはなぜだろう。
――いや、これは、きっと気のせい。
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