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「ママー、いつきのお迎え、いこ?」
花斗の思い付きに、私は危うくスマホを落としかけた。
今日のご飯は何にしようか、スマホ片手に時短簡単メニューを探していたのだ。
「は?」
彼の方を向くと、花斗はこちらにキラキラお目目ビームを炸裂する。
「ママ、いつき、きらい?」
「いやー、そういうことじゃなくて、ねー……」
この子はどこでこんなにあざとい技を覚えてくるのだろう。
苦笑いとともに、冷や汗が出てくる。
「……ほら、壱月の帰ってくる時間、分からないし」
我ながらナイス言い訳!
心の内でドヤ顔をキメていると、花斗は隣で唇を尖らせる。
「えー、いつき、喜ばせたかった」
「何で? 別に――」
「いつき、たくさんお話してくれる。ベッドも、お椅子も、嬉しかったから、僕も……」
花斗はよほどがっかりしたのか、目に涙を溜め始める。
そしてそのままうつむくと、ひっくひっくと静かに泣き出した。
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