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ああ、またやってしまった。
この子の気持ちを、すくえなかった。
自分のことしか考えていない思考回路。
親でいるには、それではダメなのに。
花斗の心の成長が嬉しいはずなのに、胸に広がる嫌悪感。
この子の優しさの芽を、潰しかけてしまった罪悪感。
だから私は「ごめんね」の気持ちを込めて、花斗の隣に膝をつき、ぎゅっと抱き締めた。
――私も、壱月の気持ちを素直に受けとれればいいのに。
「ねえ、花斗?」
まだ泣き止まない花斗に声をかけた。
すると、花斗は顔をあげる。
「お迎えは行けないけど、壱月に美味しいごはんを作ってあげよっか?」
「……」
花斗はこちらをみつめたまま、ぴくりとも動かない。
代替案を、飲み込めないのか。
「お手伝い、してくれる?」
「……うん!」
顔を覗くようにそう伝えると、今度は元気いっぱいに頷いた花斗は、ぎゅっと私に飛び付いてきた。
「お買い物、行こうか?」
「行くーー!」
花斗はさっと私から降りて、出掛ける準備を始める。
私も苦笑いを浮かべながら、その後に続いた。
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