1 二度目の再会は突然に

2/8
4729人が本棚に入れています
本棚に追加
/195ページ
 時間が止まった気がした。  それは、ずっと私が連絡を取りたかった人物で、ずっと探していた人物で── 「お前……愛音(あいね)?」 「うん」  ──この子の、父親。 「愛音、こんなガキいたんだ」 「うん……」  上手く切り返せなかった。  好きだった、最低、後悔してる、怒ってる、……言いたいことが多すぎる。  いろんな感情が胸に渦巻いて、そう言葉を返すのが精一杯だったのだ。 「キャプテン、先行っちゃいますよ?」  先を歩いていた壱月と同じ制服の男性がこちらを見ていた。 「悪い、今行く」  壱月は彼にそう言って、私に会釈し体を元歩いていた方に向けた。 「待って!」  思わず壱月を引き留めた。  上手く言葉に出来ないだけで、言いたいことは山ほどある。 「あのさ、……また、会えないかな?」 「は……?」  壱月は少し悩むように顎に指を当て、やがて胸ポケットから小さな手帳を取り出した。  そこにボールペンでさっと文字を走らせる。  そのページを破ると、私の手にさっと握らせた。 「連絡して」  壱月はそれだけ言うと、さっと同じ制服の彼の元へ走って行ってしまった。 「ねえ、ママ」  花斗が私の服の裾を引っ張った。  見れば、キラキラの視線がこちらに向けられている。 「パイロットさん、ママのお友だち?」 「あ、ああ、うん、そうだよ」  私は曖昧な笑顔を花斗に返した。
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!