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その日はいつになく早く夕飯を食べ終わった花斗。
「ごちそうさま!」
言うが早いか立ち上がり、お皿を片すことも忘れて、まだおかずを食べていた壱月の手を引っ張る。
「いつき、飛行機しよー?」
「俺まだ食ってるんだけど」
壱月はそう言いながらも、どこか嬉しそうだ。
「ママでよければ、先に遊んでようか?」
「ヤダ! いつきと一緒がいい!」
私の提案を一蹴りし、花斗は壱月の手を引き続ける。
「ごめんね、落ち着きがなくて」
「いいって。花斗が喜んでくれるのが、俺も嬉しいし」
壱月はそう言うと、残りのご飯を急いで掻き込んだ。
それからすぐに、壱月と花斗のおもちゃの箱の開封式が始まった。
「おお~」
箱から飛び出した本格的なディテールの飛行機のおもちゃを、花斗はそうっと手で握る。
こういうところは、やたらと慎重だ。
「ぶーんって、していい?」
「どうぞ。それは、もう花斗のだから」
「やった!」
花斗は嬉しそうに飛行機のおもちゃをかかげて、「ぶーん」リビングからダイニング、キッチンへと走り回る。
その様子を目を細めて見つめる壱月。
微笑ましい光景だが、私の胸の奥はもやもやし始めた。
あの笑顔をここまで育ててきたのは、私なのに。
そうやって、簡単に自分の手柄みたいに……。
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