7 甘やかされて傷付いて

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 壱月に連れられて、リビングのソファに座った。  大窓の向かいに置かれたソファと同じものだが、ここから見えるのは大きなスクリーンのテレビと、その両脇に置かれた観葉植物だけだ。  壱月は私に缶ビールを差し出す。 「いる?」 「いい。ビール苦手」 「そっか」  壱月は差し出した手を引っ込めて冷蔵庫にビールを戻すと、何も持たずに戻ってきた。 「赤ワインは? シャンパンとか。あ、確か焼酎も……」 「お酒はいらない。苦手だから」 「そっか」  壱月はそれだけ言って、私の隣に座る。  五十センチほど、間を空けて。  それから、そっと口を開いた。 「……あのさ、」  壱月の方を向くと、彼はうなじに右手を置いていた。 「……ごめん」 「え?」 「さっき怒ってたろ。ちょっと俺、無神経だったなって」  確かに、私のなかには怒りの感情が渦巻いていた。  でもそれは、壱月に対するものじゃない。  自分自身の感情と現実の差から逃げただけだ。 「壱月のせいじゃないよ」 「でも、結果的に――」  私は言いかけた壱月の言葉を遮った。 「じゃあ、もう花斗を取らないで」  思ったよりも冷たい声が出た。  怒りと悲しみの中にあったあの感情。  それが渦巻いたのは、花斗が壱月に「パパがいい」と言ったから。  悔しかったんだ、私。
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