7 甘やかされて傷付いて

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「花斗を育てたのは私。いくら花斗が可愛いからって、甘やかさないでよ! 私は今まで、花斗のために……」  ああ、ダメだ。  こんなの、ただの嫉妬。  そう思うのに、花斗と刻んできた思い出が胸を駆け巡り、ポロポロと涙が溢れた。  何をしても泣き止まなくて、一日中だっこしながら何もできなかった赤ん坊のころ。  せっかく作った離乳食を、食べる前にぜんぶひっくり返された一歳のころ。  ヤダヤダ攻撃に骨を折り、寄り添わなきゃと自分のことを後回しにしてきた今。  でも、誰もがそうやって骨を折り身を粉にして子育てしてると信じて、文句も言わず一人でこうやって生きてきた。  仕事にだって復帰して、精一杯生きてきた。  なのに。  こんな甘い蜜たったひとつで、花斗を取られてしまった。  悔しい。私だって、できればそうしたかった。 「ごめん、そんなつもりじゃなかった」  壱月は小さな声でそう言った。  それはわかってる。  これは、ちっぽけな、母親としてのプライド。  だから、優しい言葉をかけられれば、それだけ自分が惨めになる。  涙が止まらなくなった。  自分の余裕の無さが顕著になっていくようで、虚しくて。  そんな私に、壱月は優しい声色で続けた。 「でも、愛音は、さ」  それで、私は余計に惨めな思いに取り憑かれる。  膝の上で、拳を握りしめた。  すると、それに壱月が触れた。  瞬間、私の拳がピクリ跳ねて、離れた壱月の指先はそのまま宙を漂う。  それでも、壱月は声色を変えずに続けた。
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