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8 憎悪と嫌悪と愛と恋
壱月への憎悪の、はずだった。
最低な男に、気持ちを吐き出しているはずだった。
花斗はお前にやるものかと、思っていたところだった。
お前が花斗の父親だなんて認めてやるものかって、思っていた。
なのにどうして、私は今、コイツに抱き締められているのだろう。
どうして、ほっとしているのだろう。
「俺は、さ……」
壱月の腕に力がこもった。
私はただ、彼の腕の中で呆然とする。
「愛音を好きだって、愛したいって、思っただけなんだ」
…………は?
「だから、愛音の力になりたいって、思っただけなんだ。泣かせたかった訳じゃない」
頭の上から聞こえる、弱々しい声。
これは、まさか、愛の告白……?
「ごめん。……愛音の“親”としての気持ち、考えてなかったわけじゃないのに」
壱月の声は震えていた。
「俺は、愛音の苦労を何も知らないのに、分かってるつもりになってた」
「壱月……」
だったら、何で?
どうして、あのとき私の手を離したの?
どうして、今更そんなこと言うの?
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