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「ずっとずっと、愛音が好きだった」
その言葉に、思わず壱月を見上げた。
けれど、この位置からでは、壱月の顎しか見えない。
「再会した時も、変わらない愛音が好きだって思った」
それは、どの私?
「でも、今ここにいる愛音は、……変わったんだな。ちゃんと、母親なんだな」
そうだよ、私は……あの頃とは違う。
仕方ないじゃん、。
子供が出来て、環境が変わったら、私自身も変わらざるを得なかったんだから。
「でも、やっぱり愛音は愛音だった。無理して笑って、周りに気を使うくせに、……時々暴走する」
え、そうかな……そうだね、言われてみれば。
「俺は、そんな愛音の力になりたかっただけなんだ」
「……ウソ言わないでよ」
思わず漏れた一言に、壱月はふっと腕を緩める。
そして、「ははっ」と自嘲するように笑うと、指で自身の目元を拭った。
「嘘……か。そうだよな」
そうだよ。
私は、いつだってあなたに傷付けられてきた。
初恋を笑い話にしたのは、それ以上胸を抉りたくなかったから。
花斗が産まれるまでは、これでよかったのかってずっと悩まされた。
花斗を産んでから今まで、一人で走り続けなきゃいけなかったのは……全部全部、あなたのせい。
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