8 憎悪と嫌悪と愛と恋

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 胸の中から沸き起こる想いは、全部壱月への恨みだ。  でも、それを今伝えても、言い訳をする子供と同じような気がして、私は溢れ出しそうな想いも涙も、下唇を噛んでこらえた。  すると、壱月は泣き出しそうな眼差しでこちらに向き直り、私をじっと見つめる。 「これまでのこと、全部ひっくるめて、謝りたい。言い訳がましいけど、聞いてくれたら嬉しい」  その瞳を、じっと見つめ返した。  目をそらさず向き合ってくれる彼に、真剣さを感じる。  ――聞いたら、分かるのだろうか。  壱月の想いも。  憎悪のようで安心する、嫌悪のようでドキドキする、何て名付ければいいのか分からない、この変な感情の正体も。 「……分かった。聞く」  頷くと、壱月はふう、と一度息を吐きだしてから口を開いた。 「まず、一つ目。高校の時、キスだけして、ごめんなさい。愛音の告白が嬉しくて、つい調子乗った」 「え……?」  なら、何で付き合ってくれなかったの? 「正直、何でもっと早く言わねーんだって、思った」 「は?」 「あ、これ、俺自身に。告白とか、されるのは慣れてたけど、したことなくて、だから、愛音に気持ち伝えるのが怖くて……」  壱月は視線を外してさ迷わせる。 「だから、愛音がどんだけ勇気を出して伝えてくれたのか、分かってる。分かってたのに……キス、したくなったの。好きだったから。ごめん」
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