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胸の中から沸き起こる想いは、全部壱月への恨みだ。
でも、それを今伝えても、言い訳をする子供と同じような気がして、私は溢れ出しそうな想いも涙も、下唇を噛んでこらえた。
すると、壱月は泣き出しそうな眼差しでこちらに向き直り、私をじっと見つめる。
「これまでのこと、全部ひっくるめて、謝りたい。言い訳がましいけど、聞いてくれたら嬉しい」
その瞳を、じっと見つめ返した。
目をそらさず向き合ってくれる彼に、真剣さを感じる。
――聞いたら、分かるのだろうか。
壱月の想いも。
憎悪のようで安心する、嫌悪のようでドキドキする、何て名付ければいいのか分からない、この変な感情の正体も。
「……分かった。聞く」
頷くと、壱月はふう、と一度息を吐きだしてから口を開いた。
「まず、一つ目。高校の時、キスだけして、ごめんなさい。愛音の告白が嬉しくて、つい調子乗った」
「え……?」
なら、何で付き合ってくれなかったの?
「正直、何でもっと早く言わねーんだって、思った」
「は?」
「あ、これ、俺自身に。告白とか、されるのは慣れてたけど、したことなくて、だから、愛音に気持ち伝えるのが怖くて……」
壱月は視線を外してさ迷わせる。
「だから、愛音がどんだけ勇気を出して伝えてくれたのか、分かってる。分かってたのに……キス、したくなったの。好きだったから。ごめん」
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