4806人が本棚に入れています
本棚に追加
「待って、ちょっと意味分かんない」
言い訳をするように言葉を並べる壱月。
思わずそう言うと、彼はガシガシと自身の頭を掻いた。
「じゃあ何であのとき付き合ってくれなかったの……?」
「仕方ねーだろ、俺はあん時石川県の全寮制の専修学校に入学決まってた。愛音はこっちの大学だったろ。付き合えても、愛音が寂しい気持ちになるのは嫌だった。俺も……会えなくて寂しいのは、嫌だったんだよ」
「でも、石川県なら……」
「そのうち二年は、アメリカに留学することが決まってた。だから、会えなくて寂しいくらいならって、振り切った……いや、振り切れなかったからキスしたんだけど」
壱月はもう一度小さな声で「ごめん」と言った。
「これが、一つ目」
じゃあ、壱月はあの時からずっと……?
まさかね。
じゃなきゃ、あのとき私の手を離さなかったはず。
そう思ったのに、壱月は意外な言葉を口にした。
最初のコメントを投稿しよう!