8 憎悪と嫌悪と愛と恋

5/6
前へ
/195ページ
次へ
「二つ目。せっかく再会したのに、連絡を絶ってしまってごめんなさい」 「は……?」 「まさかアプリで愛音とマッチングするなんて思ってなかったし、これは運命だ、なんて思って舞い上がって……」  嘘……。だって、壱月はあのあと── 「テンション上がりすぎて、調子に乗って愛音を抱いた。あのときは、離れるつもりはなかったんだ。ずっとそばにいようって、もう手放すもんかって……でも、」 「言わないで」  思わず壱月の言葉を遮った。  聞きたくなかった。  どんな内容だとしても、私の人生を狂わせた、たった一度の夜の過ちの言い訳なんて聞きたくない。 「愛音……」  壱月は迷子のように視線をさまよわせ、やがて自嘲するように笑みを浮かべた。 「そっか、そっちは笑い話にはならないか」 「……そうだよ」  あの夜のことは、笑い話になんてできない。  そうできてたら、どんなに良かったか。  私の胸をまた憎悪と嫌悪が支配し始める。  それで、自分が期待していたことに気付く。  ため息がこぼれた。
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4805人が本棚に入れています
本棚に追加