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「本当に、愛音が好きだって心から思ってた。だから、抱きたいって……ごめん、何言っても今更だし言い訳だよな。愛音を傷付けた」
壱月がソファから立つ気配がして、顔をあげた。
それで、自分が顔を伏せていたことに気づいた。
壱月は今日持って帰ってきたキャリーケースを開くと、ガサゴソとその中を漁る。
「花斗とぶつかったのは、本当に運が良かった。愛音と、また逢えたから」
そう言いながら隣に戻ってきた彼は、私に薄い包みを差し出す。
「これは、愛音へのお土産。あと、側にいて欲しいって、しるし」
「はぁ?」
「今開けろ、なんて言わない。気持ちが決まったら、開けて。使うも使わないも、愛音次第。けど、俺は……」
壱月は私の顔を覗き込んだ。
「俺は、ずっと愛音が好きだった。これからも、ずっと好きだと思う。だから、花斗ごと、愛音を甘やかしたい。それで、愛音が俺の側にいてくれるなら」
優しい笑みを向けられて、私は思わずそっぽを向いた。
好き? 壱月が、私を――?
今も、好き?
っていうか、ずっと好きだったの――?
唐突な告白に、私の思考はついていかない。
「……ごめん、すぐには答え、出せないや」
すると、包みを受け取らない私の手を無理矢理上に持ち上げた壱月は、そこに“お土産”を乗せる。
「いつでも、待ってる」
壱月はそう言うと、眉をハの字に曲げる。
その顔のまま、そっぽを向いたはずの私の顔を見つめてくる。
私はその視線に耐えられなくなって、「おやすみ」と、そそくさと部屋に戻った。
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