8 憎悪と嫌悪と愛と恋

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「本当に、愛音が好きだって心から思ってた。だから、抱きたいって……ごめん、何言っても今更だし言い訳だよな。愛音を傷付けた」  壱月がソファから立つ気配がして、顔をあげた。  それで、自分が顔を伏せていたことに気づいた。  壱月は今日持って帰ってきたキャリーケースを開くと、ガサゴソとその中を漁る。 「花斗とぶつかったのは、本当に運が良かった。愛音と、また逢えたから」  そう言いながら隣に戻ってきた彼は、私に薄い包みを差し出す。 「これは、愛音へのお土産。あと、側にいて欲しいって、しるし」 「はぁ?」 「今開けろ、なんて言わない。気持ちが決まったら、開けて。使うも使わないも、愛音次第。けど、俺は……」  壱月は私の顔を覗き込んだ。 「俺は、ずっと愛音が好きだった。これからも、ずっと好きだと思う。だから、花斗ごと、愛音を甘やかしたい。それで、愛音が俺の側にいてくれるなら」  優しい笑みを向けられて、私は思わずそっぽを向いた。  好き? 壱月が、私を――?  今も、好き?  っていうか、ずっと好きだったの――?  唐突な告白に、私の思考はついていかない。 「……ごめん、すぐには答え、出せないや」  すると、包みを受け取らない私の手を無理矢理上に持ち上げた壱月は、そこに“お土産”を乗せる。 「いつでも、待ってる」  壱月はそう言うと、眉をハの字に曲げる。  その顔のまま、そっぽを向いたはずの私の顔を見つめてくる。  私はその視線に耐えられなくなって、「おやすみ」と、そそくさと部屋に戻った。
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