9 好きっていう気持ち

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 はっと飛び起きた。 「夢……か」  慌てて自分の身体を抱き締めた。  びっしょりと汗をかいている。  ふと隣を見れば、ベランダから差し込む朝日に照らされ、すやすやと眠る花斗の姿。  ほう、と胸を撫で下ろすと、花柄のエプロンが視界に入る。  昨夜、壱月から手渡された“お土産”の包みの中身だ。  どうやらアメリカニュージャージーの有名なオーガニックコットンの生地らしい。 「どうして、こんな夢……」  あの日――壱月に抱かれた日は、こんなじゃなかった。  あの日、私はただひたすらに幸せだった。  ――幸せだったと思いたいだけかもしれないが。  やるせない気持ちにため息をこぼすと、隣でもぞもぞと花斗が動く。 「……ママ?」 「あ、花斗、おはよう」  慌てて笑顔を作る。  あの日生まれた小さな命は、今、こうして隣にある。  決して辛いことばかりじゃなかった。  うん、そうだ。  花斗は、私の宝物。  そう思ったら、今度は偽物じゃない笑顔が溢れた。 「ママ、おはよう」  今日の寝起きの花斗は、機嫌がいい。  それだけで、十分幸せじゃないか。 「さて、準備しますか」 「しますか!」  私が言えば、花斗が真似をする。  鳴りかけた目覚ましを止めると、私は花斗と共にベッドから抜け出した。
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