9 好きっていう気持ち

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 その日、私は同期の壮馬とランチをしていた。というのも、今日も店舗に本部の調査が入ったからだ。  本社に近い私の店舗は、何かするのによく実験店舗として扱われる。  顧客満足度調査と題して、壮馬の部署の人たちがよく訪れるのだ。  “本部の人間は店舗に来たら、店長とランチ休憩”という謎の風習のせいで、こうして彼とカフェに来たのだが、そうすると当然のように壮馬が壱月とのことの続きを聞いてくる。  隠すこともないので、私は同居から今に至るまでを、壮馬に洗いざらい話した。 「つまり、そのパイロットの彼は愛音が好きだった、と」 「うん、そう」 「なんか、すごいことになってきたね」 「本当。……正直、どうしていいか分からない」 「そっか……」  壮馬は困ったように笑みを浮かべて、ランチのパスタを口へ運んだ。  私も、パスタを頬張る。けれど、味を感じない。 「でも、ある意味ロマンチックじゃん?」 「はぁ?」 「ずっと好きだった人が、実は自分をずっと好きだった。しかも、その人が実は子供の父親だった、なんて」 「そう?」 「うん、俺とは大違い」  壮馬は自嘲するように笑った。  私は相づちが打てなくて、曖昧な笑みを浮かべた。 「はは、気を遣われた」 「そういうつもりじゃ……」 「いいよ、気なんか遣わないで。俺の中では、もう終わったこと」
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