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言いながら、一緒にため息も吐き出した。
好きだって言われても、甘やかしたいと言われても、妊娠が発覚してからの毎日は、帳消しにはならない。
壱月はあの日のままなのに、私だけがお腹で命を育んで、私だけが“親”になってしまった。
だから、花斗を取られたくないっていう独占欲が、親としてのプライドが、壱月を父親だと認めることを拒否する。
「ま、突然現れた父親に、手柄全部取られてったらたまんないよな」
「……」
何も言わない私に、また壮馬は苦笑した。
「ま、それはそのうち言うとして、さ。付き合う気は、あるの?」
「え?」
「告白されたんでしょ?」
「うん。でも……まだ、考え中」
謝られたからといって、壱月への嫌悪感が拭えたわけじゃない。
それに、“女”として壱月の隣に立つことに戸惑いがあった。
「新たに恋をしよう、だなんて、今更思わないしさ」
けれど、言ってから思った。
いや、口に出したから思ったのかもしれない。
壮馬はパスタを食べ終えて、アイスコーヒーのストローをカラカラ回している。
「……ねえ、壮馬」
「ん?」
「彼と恋、まだできると思う?」
「……俺に聞くなよ」
壮馬は自嘲するように「ははっ」と困り顔で笑った。
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