9 好きっていう気持ち

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 遅番の水瀬に引き継ぎをしたら、今日の業務終了だ。  怒濤の毎日も、心に迷いがあると、なんとなく長く感じてしまう。  思わずため息をもらすと、水瀬に「店長お疲れですね」と言われ苦笑いをした。  それから花斗のお迎えに、保育園へ向かう。  園内へ入るや否や、「あ!」と顔を合わせこちらに視線を向けたのは、あまり話したことのない先生だった。 「ママさん、再婚するんですか!?」 「はい?」 「花斗くんが言ってたんです! パイロットさんと一緒に住んでるって」  おそらく、花斗が保育園中に壱月と同居を始めたことを言いふらしたのだろう。  再婚も何も、私は未婚の母だと内心自嘲しながら、「そんなわけないじゃないですか~」と愛想笑いを浮かべた。 「あ、ママ~!」  お迎えに気付いた花斗が、珍しく自ら駆け寄ってくる。  すると、気付いた姉もこちらに寄ってきた。 「大丈夫なの? 同居……」 「お姉……」  姉は声を潜めて、心配そうな顔をした。  壱月が花斗の父親だと知っているのは、壮馬の他には姉だけだ。 「何もないならいいんだけど。子供って秘密とか守れないからさ……何か事件が起こる前に頼ってよ? 愛音、一人で抱え込む癖があるんだから」 「うん、ありがとう……」  姉の優しさには脱帽だ。  けれど、頼れるわけがない。  同棲したての愛の巣に、「やっぱりこの子の父親と上手くいきませんでした」と、未婚の母が子連れで乗り込むなんて、できるわけがない。  私の心の内を悟ったのか、姉は「たまには連絡してよ?」と眉を下げた。
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