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10 いたいのいたいのとんでいけ
手巻き寿司パーティーは、最初から最後まで花斗が盛大にイクラを食べまくるという暴挙で終わった。
壱月とともに床にこぼれたイクラの粒を拾っていると、不意に彼と手が触れて、思わずびくんと引っ込める。
「ごめん……」
私がそう言うと、壱月は「ははっ」と自嘲するように笑って、その場から立ちあがった。
「いつき、これ何?」
その声に顔を上げる。
花斗が壱月に、いつの間に持ってきたのか昨日もらったカラフルな箱を差し出していた。
そういえば、昨日はこの箱をスルーして、ずっと飛行機に夢中だったなと思い出す。
「ブロック。やるか?」
「やる!」
「じゃあ、皿洗ったらな」
「えーー」
壱月に頭をくしゃっと撫でられた花斗は、ぶうっと頬を膨らませる。
ここで私が出しゃばると、きっと花斗は「ママはダメ」と言うに違いない。
私はまたため息を溢して、「お皿、私洗うよ」と立ち上がった。
「愛音……」
壱月は何か言いたそうにしていたけれど、私はそのままキッチンへ入った。
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