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「だからね、」
花斗はそう言うと、私の胸にそっと自分の右手を当てる。
「いたいのいたいの、とんでいけ~」
その様子に、ふわんと気持ちが軽くなる。
何かがとんでいく代わりに、ほっと天使が舞い降りた感じ。
しゃんとしなきゃ、ね。
「ありがとう、花斗。もう大丈夫だよ」
そう言って頭をポンポン撫でると、花斗は照れ笑いを浮かべる。
だから、私も。
「花斗、じっとしてね〜」
そう言って、花斗の小さな胸に手を当てる。
「いたいのいたいの、とんでけ〜」
花斗ははっと目を見開いた。
そんな花斗に、微笑みかける。
「壱月も、胸が痛いんじゃないかなぁ。せっかく一緒にお家作ってたのに、あんなふうに壊されちゃったら、悲しいと思うよ?」
花斗はしばらく下を向いていたが、そのうち壱月の手を引いて、私の前に連れてきた。
「いつき、座って」
「は?」
「いいから」
そう言って、花斗は彼の胸にも手を当てる。
そして、「いたいのいたいのとんでいけ~」をすると、
「仲直り」
花斗はそう言って、自身の右手で壱月の右手をきゅっと握った。
「ママと、いつきも」
「え?」
「別に、喧嘩なんて……」
「いいの! なかよしの、しるし!」
今度は、私の右手と壱月のそれを花斗が無理矢理掴んで突き合わせる。
私がその手をぎゅっと握ると、壱月も握り返してきた。
ふと彼を見上げると、壱月は曖昧な笑顔のままこちらをじっと見つめる。
彼の瞳に映った私も、同じような顔をしていた。
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