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11 私の決意
その日の夜。
花斗が寝静まった後リビングへ向かうと、大窓に向けられたソファに座る壱月がいた。
「壱月」
声をかけると、振り返った壱月がこちらに笑みを向ける。
「愛音……ちょうど良かった。話したかった」
「私も」
「そっか」
壱月はそう言うと、さっと左に寄ってくれる。
私は空いた右側にそっと腰を下ろした。
「花斗、こっから空港見るの、好きだよな」
「そりゃ、憧れだからね」
「憧れ……な」
私も壱月のように窓の外を見る。
羽田空港から、ちょうど飛行機が一機飛び立った。
花斗が飛行機を好きになったのは、いつからだろう。
喋れない頃から、気付けば大空を飛ぶ飛行機を見る度に、「あー、あー」と指を差し私にその存在を教えてくれていた。
「運命って、残酷だな」
壱月は長い足に頬杖をつき、窓の外を眺めながら、ぼそっと呟くように言った。
「俺、パイロットになれるって、言っちまったよ……」
色弱者は、就ける仕事の幅が、ぐっと狭まる。
パイロットも、そのひとつだ。
色弱者に対する職業差別の少ない他の国でも、色弱者であると判断されると就けない唯一の仕事がパイロットだ。
花斗が色弱の可能性を示唆されてから、私なりに色々調べて、知ったことだった。
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