11 私の決意

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 どのくらいそうしていただろう。  私を抱き締めていた手が少し弱まった頃、私も彼の背に回していた腕を解いた。  ふと顔を上げれば、酷い顔をした壱月と目が合う。 「酷い顔」 「それ、私も思った」  お互いにふふっと笑うと、おでこがコツンとぶつかり合う。  その距離感にびっくりして、私は慌てて体を離した。  壱月も、ソファに座り直している。 「ごめん……」 「いや、こちらこそ……ごめん」  しばしぎこちない空気が流れる。 「あの……さ、」  その空気を破ったのは壱月だった。 「昨日のこと、忘れていいから」 「え……?」 「返事も、いらない。俺、考えが浅はかすぎた。好きって気持ちだけじゃ、何も大事にできない。もっとちゃんと、愛音と花斗に向き合いたい」 「壱月……」  私はそんな壱月をじっと見た。  その横顔は、優しくて、暖かくて、どこか寂しそうだ。  そういうふうに見えるのは、壱月が涙を流した理由を知ってしまったから。  彼の涙は、私を思う気持ちだ。  壱月は本当は、そんなに優しい。  とっくに知っていた。  だって私は、そんな壱月が、好きだったんだから。
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