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「何?」
「愛音と連絡取れなくなった理由」
ああ、と返せば、ぎゅっと背に回された手に力が入った。
どうやら、前回のように“聞きたくない”という選択肢はないらしい。
私は覚悟して、彼の続きの言葉に耳を傾けた。
「あの日、俺の両親が死んだんだ。で、バタバタしてて、気付いたら結構経ってて、愛音に今更連絡するのもってなっちゃって。……なんて、今更言い訳だけど」
壱月は「ごめん」と小さく呟き、私の肩に頭を乗せた。
え……?
驚き言葉を失い、固まってしまう。
けれど、小さく息をこぼし頭を私の肩に預けたまま、私を抱きしめ続ける壱月は、大きな子供になってしまったよう。
私は、そんな彼の背を、よしよしと撫でた。
「もう、三年も前なんだな」
「うん……」
身体を起こした壱月は、私の背から手を退ける。
そして、困ったように微笑んでから、「そろそろ寝るか」と私の両肩をポンっと叩いた。
「これから、よろしくな。改めて」
壱月は私の頭をぽんぽんと撫でる。
「こちらこそ」
答えると、壱月は立ち上がって私の手を取る。
私を立ちあがらせ部屋の前まで来ると、「おやすみ」とまた私の頭をぽんぽん撫でる。
壱月はそのまま自分の部屋へと入っていった。
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