11 私の決意

8/10
前へ
/195ページ
次へ
「何?」 「愛音と連絡取れなくなった理由」  ああ、と返せば、ぎゅっと背に回された手に力が入った。  どうやら、前回のように“聞きたくない”という選択肢はないらしい。  私は覚悟して、彼の続きの言葉に耳を傾けた。 「あの日、俺の両親が死んだんだ。で、バタバタしてて、気付いたら結構経ってて、愛音に今更連絡するのもってなっちゃって。……なんて、今更言い訳だけど」  壱月は「ごめん」と小さく呟き、私の肩に頭を乗せた。  え……?  驚き言葉を失い、固まってしまう。  けれど、小さく息をこぼし頭を私の肩に預けたまま、私を抱きしめ続ける壱月は、大きな子供になってしまったよう。  私は、そんな彼の背を、よしよしと撫でた。 「もう、三年も前なんだな」 「うん……」  身体を起こした壱月は、私の背から手を退ける。  そして、困ったように微笑んでから、「そろそろ寝るか」と私の両肩をポンっと叩いた。 「これから、よろしくな。改めて」  壱月は私の頭をぽんぽんと撫でる。 「こちらこそ」  答えると、壱月は立ち上がって私の手を取る。  私を立ちあがらせ部屋の前まで来ると、「おやすみ」とまた私の頭をぽんぽん撫でる。  壱月はそのまま自分の部屋へと入っていった。
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4767人が本棚に入れています
本棚に追加