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私の身体に命が宿ったその日、壱月はご両親を失っていた。
その事実に胸をモヤモヤさせながら、花斗の寝息を確認する。
花斗が今日も生きていることにほっと安堵の息をつくと、ベッドサイドに壱月からもらったエプロンがおいてあるのが目に入った。
明日は、これをつけて朝御飯を作ろう。
そう思ってベッドに潜り込んだけれど、新たに知った事実が頭を駆け巡って、なかなか寝付けそうにない。
自分のことばかり考えていた。
“種を植え付けられてトンズラされた可哀想な女”だとは思われたくないって、ずっと思ってた。
けれど、それを一番意識していたのは、自分だったのではないか。
壱月を責めた。
どうして私だけって、悩んだ。
けれど、私が花斗と過ごした時間だけ、壱月にも時間は流れていたのだ。
壱月にも大変な事情があったなんて、どうしてそんな簡単なことに気づけなかったんだろう。
突然聞かされた、あの日の真実。
受け止めてあげられなかった、自分の不甲斐なさ。
先程見た、壱月の困ったような笑顔を思い出す。
壱月に、何があったのだろう。
壱月は、どんな想いでいたのだろう。
それは、きっと“両親の死”だけで片付けられない何かのような気がしてしまって。
恨んだ。
自分のことばかりだった、私を。
知りたいと、思った。
壱月のことを。
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