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翌日、結局一睡もしないまま外が明るくなって、目覚ましが鳴る前に布団から這い出た。
まだ寝息を立てる花斗の横で着替えを済ませ、壱月にもらった新品のエプロンを身に付けた。
「よし!」
部屋の姿見の前でそう言うと、後ろからごそごそ音がした。
「ママ……?」
しまった、花斗を起こしてしまった!
不機嫌発動の可能性に身構えつつ振り向くと、花斗はベッドに身体を起こしたままふにゃりと笑って「ママ、可愛い」と言ってくれた。
ああ、天使……。
そんなことを思いながら、せっかく起きた花斗と共にルンルン気分でリビングへ向かうと、コーヒーの香りがして目を見張った。
「あ、おはよ」
壱月は既にダイニングで、マグカップ片手に本を読んでいる。
しかも、その前には見事な和食の朝食が並んでいた。
で、で、出遅れた〜!
せっかくエプロンまでつけてやる気満々だったのに!
しょぼんと肩を落とすと、壱月の「はは」っと笑う声が聞こえた。
「可愛いじゃん、愛音」
「え……?」
「いつきも? 僕もね、可愛いって言った!」
花斗はぴょんぴょん跳び跳ねながら、壱月の元へ向かい、その膝にペタリとくっついた。
本をパタンと閉じた壱月は、目の前にやって来た花斗を膝の上に乗せ、「おおー、分かってるな!」と彼の頭をよしよしと撫でた。
「でも、ご飯……」
「……ぷっ!」
思わず吹き出した壱月につられて、私もクスリと笑う。
すると、花斗も笑い出す。
同居を始めてから、一番幸せな朝が来たような気がした。
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