12 花斗の未来を描いて

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 帰宅すると、さっそく花斗はブロック遊びを始めた。  すっかりハマったらしい。  キッチンには既に壱月がいて、何やらボウルの中身を捏ねている。  出遅れた……。  今朝も出番なしだったエプロンを思い出し、肩を落として花斗の遊びに交ぜてもらう。  今日は持ち帰りの仕事もない。 「何作ってるの?」 「空港。これ、停めるところ」  なるほど、花斗の指差した先には壱月にもらった飛行機と、壱月に拾ってもらった飛行機のおもちゃ。  道のように並べたブロックと、その先には高い建物(?)。 「これ、おうち?」  きっと我が家だと思い、質問するも「違う!」と早々に返された。 「管制塔だろ?」  いつの間にかボウルを抱えた壱月が背後にいた。 「そう、それ!」  花斗は分かりやすく顔を綻ばせる。 「よく知ってるな、花斗」 「園で見た本に、あった!」  花斗のパイロット馬鹿ぶりが発揮されていて、私は思わず苦笑する。 「いつき、一緒にやろ?」 「ちょっと今は無理だなぁ……」  壱月は困ったようにボウルの中身を花斗に見せる。  捏ねていたのは生肉。 「それ、なぁに?」 「ハンバーグ」  壱月のその声に、私は立ち上がった。  ハンバーグなら、私も作れる! 「壱月、代わるよ」 「え、でも……」  私は立ち上がって、壱月に手を差し出した。 「エプロン、使いたいんだ」  そう言うと、壱月は一瞬目をぱちくりさせ、それから照れたように笑った。 「じゃ、お願いします」  ボウルを私に手渡した壱月は、シンクへ手を洗いに向かった。  目の前では、花斗が「ハンバーグ~、ハンバーグ~」とハンバーグ踊りを踊っている。  私はボウルを一度ダイニングに置いて、部屋にエプロンを取りに行く。  部屋の姿見に映った自分が思ったよりもニヤけていて、私は両頬をペチペチと叩いた。
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