プロローグ Sweet Dream

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プロローグ Sweet Dream

愛音(あいね)……」  熱を(はら)んだ瞳が、私を見つめる。  シーツに縫い止められた私は、ただその瞳を見つめ返す。  私の手首を掴んでいた手が離れると、その手は私の頬をやさしくなぞった。 「ん……」  思わず息を漏らし身を(よじ)ると、彼の唇が私の鎖骨に押し付けられた。 「可愛い」  頭を上げた彼がこちらをじっと見る。  まるで獲物を得た野獣のように。 「や……言わないでよ」  顔をそらすと、顎をすくわれちゅっと唇が重なった。 「いいじゃん。俺はもっと聞きたいんだけど」 「壱月(いつき)……」  じわりと熱くなった目頭で彼を睨むと、壱月はふっと笑った。 「イヤ? なら、やめるけど」  ここはホテルのベッドの上。  ここまでついてきてしまった手前、「やっぱりやめよう」なんて言えない。  何より、心が彼を欲する。  あのときの後悔を、繰り返したくない。  好きだ、好きだ、好きだ。  だから、触れて、感じたい。  今、奇跡みたいに、目の前にいる彼を。 「ヤダ。もっと、して?」  言ってから恥ずかしさに涙が溢れそうになって、慌てて唇を噛んだ。 「なら、遠慮なく」  再び合わせられた唇から、彼の熱が私の中にするりと入り込んでくる。  それを受け入れれば、私の中の熱くなった想いを全部絡め奪っていく。 「ふあ……あ……」  優しく素肌に触れる彼の手つきに、思考が蕩けていく。 「愛音……」  私の名を呼ぶ愛しい声に、身体中が疼く。 「いいか?」  その声に、必死にコクコクと頷いた。  壱月の口角がふっと上がる。そのまま、彼は私を抱き締めた。  大きな背中に腕を回せば、彼が首筋に噛みついてくる。 「あ……」  ──私はそのまま、彼の熱を受け入れた。
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