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小生とロバート・ワイアット
みなさんこんにちは。洲原敷いちろうです。
仕事復帰に合わせて新作エッセイをやってみようと思います。
タイトルは音楽あれやこれや。
音楽を止めるなが、だいぶ膨大なんで、どうせ読んでくれねえんだろうなあ。でも結構面白いと思うんで、音楽を止めるなの再録含めて焼き直ししようと思いましてん。
それじゃあ始めてみよう。ハナは何と言ってもこいつ。ロバート・ワイアット。
ついに、小生はジャズロックを、チャーチャーを卒業し、チャーチャーの先を見据えていこうとしているのですよ。
そして行くぜ!カンタベリーの向こう側に!
行ってみたらそいつは既にいたという。
右手に葉っぱ、左手に赤旗を持ってブンブン振っていました。
「ヨーシフ!ヨーシフ!チャーチャ、じゃねえや俺は先に行くんだ行くぞ兄弟腕を組め!川が赤い!やべえこれ以上いくとシドみてえになっちまう(狂人シド・バレットは昔のダチ)。人のふり見て我がふり直せ(ワイアットのアホなアフォリズム)」
訳の解らないことを言っていたのが我等の誇り、偉大な親方(スターリン的肩書き)カンタベリーの不死鳥、ロバート・ワイアットでした。
ロバート・ワイアットはソフトマシーンのドラマーでボーカルで裸でした。
おティーンティーンをブラブラさせながら、実家の母ちゃんが開いたアパート、
ワイアット草荘で採れた葉っぱをモシャスパしながら、ロバートは高く舞い上がり、やがてまっ逆さまに落ちたのでした。
本当のことを言うと、1973年にホテルの4階から。
ええもう。それで親方は歩けなくなってしまったのでした。
バスドラのペダルすら踏めなくなった親方はめげることなく復活し、キーボーディストとなってその後、ロック的な共産主義者としての伝導を始めたのでした。
実にほんわかしたジャズで。
あー久しぶりのカンタベリー系小咄でした。結局ジャズで。ってなるのは今も変わらんね。
まあ要するにワイアットのアルバムが手に入ったのでちょっと紹介してみようかと。
みなさんもご存じの通り、ワイアットの音楽キャリアの最初はワイルド・フラワーズから始まりました。
(注)左からブライアン・ホッパー、ワイアット、リチャード・コフラン、中岡、じゃねえやヒュー・ホッパー。
インポテンツやメモリーズが名曲です。
ワイルド・フラワーズは学生バンドの先にいくことが出来ずにあっさりと消滅。
メンバーはそれぞれソフトマシーン(ワイアットとベースのヒュー・ホッパー)とキャラバン(ベースのリチャード・シンクレアとドラムのリチャード・コフラン)に別れて、それぞれが発展していきました。
これがカンタベリー系の創世記ですね。
その後はあんまり順調とはいきませんでした。
ソフトマシーンのオリメンであるデビッド・アレン(どヒッピー、ギター)がフランスからイギリスに行こうとしたがあっさりドラッグ所持で逮捕入国出来ずにフランスに置き去りになり、仕方なくマイク・ラトリッジをリーダーにしたトリオ編成で頑張っていたが、ある日気がついたらオリメンでベースのケビン・エアーズ(ど陰キャ)はライブツアー中にも拘らず書き置き残して失踪。後にスペインのイビサ島でヒッピーになってるのが判明しました。
まあその後トンズラしたエアーズの代わりにヒュー・ホッパーがベースとして加入、リリースされたセカンドで、「お前に捧げる歌。でも聴いてねえしお前」などの名曲を発表。
続くサードはワイアットの最後の輝き。「ムーン・イン・ジューン」は未だにソフトマシーン史上最高の名曲と言われているとか。
しかし、ワイアットの受難はここから始まります。
メンバー内の音楽性の違いに苦しむ毎日。
ワイアットはジャズロック路線は嫌いじゃないけれど、彼が演りたかったのはロックのリズムでジャズをやるより、ジャズのリズムでフォークがやりたかったそうで。
しかもジャック・デジョネットっぽく叩けって言われたのが凄い嫌だったそう。
何かを強要されるのが死ぬほど嫌いだったワイアットは四枚目のフォースでソフトマシーンを脱退。ジ・エンド・オブ・アン・イヤーをリリース。その後はマッチング・モールを結成したりして、ソフツが嫌で逃げ出した割にはポストソフツなサウンドを作っていきました。
やらされるのが嫌いなワイアットは、やらされなくてもいいポジションにいればそれでよかったようですね。
「オーキャロライン」は本当に名曲。
でもマッチング・モールはまんまソフツのファーストでした。
しかし、ワイアット人民共和国は長くは続きませんでした。
2作目のリトル・レッド・レコード、邦題「そっくりモグラの毛語録」で、恐怖の鬼監督ロバート・フリップを呼んじゃった為にバンドはあっさり崩壊しました。
(注)台湾解放じみたふざけきったジャケット。
でもね。アン・イヤーは完全にワイアットのコミュニズム的サウンドの表出でした。
ギル・エバンスのラスベガス・タンゴだけが非オリジナル曲。あとは仲間ありがとう的な曲ばっかり。写真家の兄貴の名前がタイトルについてたくらい。
トラック2の「どこでもマーク」はマーク・チャリグ(コルネット)じゃなくてワイアットの兄貴のマーク・エリッジでしたごめんね。
それはもうチャーチャー言ってたんですよ。
そして73年に落下。酔って落ちたらしいが、どうやら愛人と浮気してたところを嫁に見られて窓から脱出!失敗!ってのが本当のところっぽい。
下半身不随という大きなハンディを抱えたワイアットは、UFOクラブというライブハウスに出演してた頃からの友人、ピンク・フロイドのドラマー、ニック・メイスンのプロデュースの元、ノーウォーキンなワイアットの始動たる復活アルバム「ロック・ボトム」をリリースしました。
世界一悲しい声で悲しい歌を歌ってました。
実際小生が知るワイアットの歴史はここまで。
結構長かったなあ。ワイアットの表層なぞっただけでこれ。他のメンバー入れたらもっととんでもないことになりそう。
とりあえず小生のコレクションには、ワイアットのソロアルは「ロック・ボトム」、「シュリープ」、「カックーランド」まででしたんで、時代に忠実に2枚購入したのがこれ。
(注)これシュリープ。
「ルース・イズ・ストレンジャー・ザン・リチャード」と、「オールド・ロットンハット」の2枚ですう。
(注)嫁のアルフレーダ・ベンジの絵。
ルースはリチャードより知らないと古い腐り帽子って何とも言えないタイトル。ルースは75年発表ね。ロック・ボトムの翌年。
どうでもいいがせわしない。73年に落ちて翌年ロック・ボトム、翌翌年にルース。
あー。やっぱりワイアットだよ。
実にほんわかしたアバンギャルドなフリージャズっぽい。
ルースはまだ仲間がガヤガヤしてていいね。
あれ?サックス入ってるけどこれ、エルトン・ディーンじゃないか?ソフツにいた。
そんな訳なかった。ゲイリー・ウィンドだったよ。
ルースに入るリード楽器は全部ウィンドでした。ワイアットのボーカル以前にウィンドがジャズだったよ。バリサクなんかも吹いてます。
ベースはヒュー・ホッパーと思ったがビル・マコーミックだった。
マッチング・モールのベースの人。さっきの台湾解放ジャケットで赤星帽子被ってた奴ね。ドラムマガジンのAK持ってたデイブ・マクレエの後ろの右にいた方。
更にはブライアン・イーノも参加してる。
うん。毛語録にもいたなイーノ。ジャケットにはいなくなったが。
イーノと関係があるのは、その後もしばらく名前が出てくるフィル・マンザネラ。ピンク・フロイドにロキシーのリードギタリストですよ?デビッド・ギルモアと組んでやっていた人。
そうなるとジョン・ウェットンとかエディ・ジョブソンなんかも絡んでくる。
ウェットンはベーシストでキンクリのボーカル、ジョブソンはカーブド・エアーのバイオリン。
凄え凄え人材の広がり。これがカンタベリー系。ダチのダチはダチって風潮ね。
ワイアットのコネの凄さが解る。
実際聴いてみたらああワイアットっぽい。チェの歌とかマッディ・マウス1、2、3とか堪らんサウンド。
どうやらワイアットのチャーチャーの先はフアンフアンだったらしい。
ああー。楽しいなあ。歌え人民フアンフアンフアン(エコー的残響が半永久的に続く)。
やっぱりお前等も共産主義好きだろ?マンザネラにイーノ。違う?じゃあ失せろけっ。俺は共産主義の元でフアンフアン言いたいんだ!
それで次のロッテンハットは完全なソロ。ワイアットボッチのサウンドのアルバムですね。10年空いてました。久しぶりー。
小生は共産主義にクソみたいな連中しか知らないんで完全な反共反左です。
なんで歌詞の意味とか調べると嫌な気がするので、純粋に音楽だけ聴いてみた。
個人的にはロッテンハットの方が好きだ。
トラック1の同盟が好き。更にはA面後半のヴァンダルシアがマイフェイバリット。小曲ながら「イギリスへの道」もいい。
何だろうね、ぼっちで録音したって構わねえや。俺っちの救済に駆けつけたマイク・オールドフィールド(チューブラーベルズの作者)だって1200回オーバーダブしてんだからよー。キーボードもベースもハンドドラムも全部一人でやってやるぜー。義を見てせざるは勇なきなり。出る前に釘は打たれるもんだろう?おめえは歌詞とジャケットの絵頼むぜアルフレーダ。
そんな訳でクレムリンの真っ赤なフェニックス、ロバート・ワイアットはどこまでも一人で歩き続けました。ロックの地平線へ向かって。歩けないけど本当は。
ジャズで。
久しぶりにやりましたー。またねー。音楽あれやこれや。
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