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「そう……ですが、俺に兄弟はいないです。よくある顔ですから、はははっ」
「セインさん、その話、詳しく聞かせてほし……うぐっ!」
さっさと終わらそうとしたのに、余計なところを聞こうとしてくるリカードを肘で打って、そろそろ本題に入ることにした。
「それにしても、お二人は付き合ってるのかな? うっ……羨ましいな、俺はモテないから、ははは」
リカードがこの台詞を言うと言っていたが、どう考えても嫌味か嘘をつくなとツッコまれる事態になるので、俺が言うしかなかった。
演技になった途端に棒読みで、口を引き攣らせて喋る俺を、ロティーナは呆れた目で見てきた。
そしてセインが何と返すのか、わずかに希望を持った目でセインに視線を向けたのが見えた。
「いえ……、飲み仲間です」
さすがにこの質問は向こうも動揺したようだった。セインは気まずそうに目を伏せて答えた。
改めて聞かされた言葉に、ロティーナはショックを受けた顔をした。
そして俺もまた、ズドンと胸が重くなってしまった。
二人で寄り添って店内に入ってきた時は、聞いていたより距離が近く感じた。
リカードの質問に答えながら、セインは時々ロティーナと視線を合わせていた。
それは疎い俺にだって分かる、熱い視線に思えた。
ロティーナの心配は杞憂で、ただシャイな人なのではと思い始めていた。
それが飲み仲間。
友人ですらない。
この場所で酒を飲むだけの関係、自分を好きでいてくれる女性を適当に繋ぎ止めて、そんな薄っぺらい関係だとわざわざ口にしたこの男に俺は怒りが湧いてきてしまった、
ショックを受けたロティーナの顔を見たら、まるで自分が傷ついたように胸が痛くなった。
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