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俺自身、トロくて臆病なのに自分がこんなに熱い人間だなんて思っていなかった。
頭が完全に怒りに染まって、自分でも出したことがないくらいの低い声が出てきた。
「……へぇ、そうか。だったらさ、他のやつにロティを奪われても構わないよな? お前はただの飲み仲間なんだからよ」
リカードは俺が予定にないことを言い出したのでポカンとした顔で固まっていた。ロティーナも同じく驚いていた。
「ええ、そう、ですね…………、あの、用事を思い出しました。失礼します」
「セインっっ」
俺の言葉に答えたセインは逃げるように立ち上がって、出口に向かって歩いて行ってしまった。
途中まで追いかけたロティーナだったが、セインのあまりの速さに追いつけなくて転んでしまった。
一度振り返ってロティーナを見たセインだったが、ロティーナを助けることなく、頭を振るようにしてそのまま店から出て行ってしまった。
バタンと安っぽい木の扉が閉まる音がやけに大きく響いた。
ロティーナを助けに行ったリカードの姿を見ながら、だんだん冷静になった俺は、大変なことをしてしまったと頭を抱えた。
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