ルドルフ、学園に入学する

5/12
777人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
しばらく筋トレしたあとは、ジェラルド様と共にオリエンテーションの為談話室へと向かう。 今日の会は一年生への寮の使い方の説明が目的なので、寮長たち以外の上級生は、なんとなく様子を見に来たよ〜って感じの緩さだった。兄様達も見に来てくれてて、授業参観の保護者みたいに壁際から手を振ってくれていた。歓迎会などは後日、全学年揃った状態で盛大に行われるそうだ。 副寮長の説明によると、食堂、浴場、談話室は全て一階に集まっていて、各階にシャワー室とトイレがある。エレベーターなどは勿論ないので、住む階層が高い一年生はシャワーで済ませることが多いらしい。 ……他にも説明はあったけど、まぁ概ね想像通りだったので割愛させてもらう。 そして、説明が終わると、今度は自己紹介の時間になった。 一年生は全部で十五人で、みんな簡単な自己紹介をしていく。なんとなく爵位の低い順に話していく暗黙ルールができあがっているので、俺は最後の方になるな、と幾分落ち着いて見ていられた。 赤薔薇寮は貴族の子息が大多数で、茶会などで会ったことがある人も多くて、皆名前ぐらいは分かる。 まあ、俺はちょっっっとだけ、人見知りだから、気兼ねなく話せるってぐらい仲が良いのは……、兄様と殿下たちだけだけど。……こ、これから仲良くなれれば問題ない、よね? そんなことを考えつつ、挨拶を聞いていると、次に立ち上がった男を見てハッと驚く。 「オールブライト辺境伯が次男、ロレン・オールブライトです。趣味は剣術。王都には滅多に来ないので、皆さん初対面だろうが、ぜひ仲良くしてくれたら嬉しい。四年間よろしく」 そう言ってお辞儀するのは、前世ゲームの時に散々見た男。 艶やかな褐色肌にサラサラの白い髪。瞳は猛禽類を彷彿とさせる金色で、真面目そうにキリリと整った眉。 メインの攻略対象でないにも関わらず、同じくらいの人気を誇っていた彼_ロレン・オールブライトは、セーブやアプデの待機時に必ず出てくるサブキャラだった。 そのぶっきらぼうでクールな口調は、辺境伯領である西の地方の方言が出ないように気をつけてるから、なんていう詳細設定が、ロレンを攻略できるサブルートで初めて明かされた時は多くのファンが歓喜したという(※前世妹情報より)。 会ったことがないからすっかり頭から抜け落ちていたけど、剣術好きなら話しが合いそうだ。仲良くなれたらいいなぁ。とても十四歳とは思えないほど恵まれた体躯と、それに見合った筋肉がついているから、ぜひおすすめ筋トレ法を聞きたい。 そしてロレンが席に着くと、自己紹介は俺を含めて残り三人。次はジェラルド様ともう一人いる、この学年での攻略対象者__ 「マクヴィ侯爵家嫡男、ハリソン・マクヴィです。 好きなことは読書とチェス。これからどうぞよろしくお願い致します」 そう優雅にお辞儀すると、一つに束ねている長い深緑の髪がハサリと揺れる。毛先に行くほど黒くグラデーションになった髪は神秘的な美しさがある。切れ長の目に銀縁眼鏡がより美人度を際立たせているなと思った。 社交場で何度か会ったことがあるけど、特別に誰かと親しくしているところは見たことがなく、その丁寧なのに突き放すように冷たい態度から「氷の貴公子」と呼ばれている。ゲームではツンデレ属性になっているけど、それは主人公と彼が打ち解けてからで、ゲーム内でも最初はめちゃめちゃに距離をとられてた記憶がある。 攻略できた時は達成感すごかったなぁ……なんて思い返していたけど、次は俺の番だったと慌てて立ち上がる。 「レマラック公爵家三男、ルドルフ・レマラックです。 趣味は剣術。猫を飼っています。籠なしで外に連れ出すことはありませんが、把握お願いします。四年間よろしくお願いします」 辺りを見回して、出来るだけ落ち着いているように見せつつ挨拶をする。内心バクバクだけど!今世貴族してても大人数の前の自己紹介は、前世の頃から変わらずドキドキするもんだ。 周囲は微笑みながら拍手してくれて、ほっとしながら席に着いた。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!