ルドルフ、王様に謁見する

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そうして、今度は陛下と皇后陛下が対立する構造になった。 正直俺たちレマラック家の三人は、呼ばれてきたはずなのに、もはや家庭裁判所に紛れ込んだ部外者感が出てきてしまった。大人しく黙っているしかない。 「皇后、突然この間に入るなど非常識だろう」 「…も、申し訳ありません。ですがエドワードに何かがあれば私は……」 そう言って、皇后陛下はオロオロとしている。正直、不貞を働いたって言うぐらいだから、不敵な感じ……例えるならオペラのカルメン的な人を想像してたので、かなり印象が違ってびっくりだった。 そして、その不安そうな皇后の様子を見て陛下はぐしゃりと顔を歪める。悔しさと悲しさが入り交じったような、そんな表情だ。 「はっ、それほどまでに、私とは別の血を引く子を王とさせたいのか。……それほどまでに、その男が大事なのか」 皇后陛下はそこまでハッキリ言われると思ってなかったのか、驚きで目を見開いたあと、悲しそうな顔をして必死に弁明する。 「違います。私は……ふ、不貞など断じて……、断じてしておりません!!」 「ならば何故、エドワードの髪は黒色なのだ?何故私と似ても似つかぬ色をしている?不貞なきよう見張られていた末生まれたジェラルドはあの髪色だと言うのに」 「それは……、それは……。うぅ……」 皇后陛下は言い淀んだ後、ついに泣き出してしまった。 謁見の間はこれ以上ないってぐらい、重くて暗くて張り詰めた空気感。 エドワード殿下もジェラルド様も感情が抜け落ちたような顔で、いくら当事者であっても八歳や七歳の前でしていい話じゃないだろうと、心境を考えて悲しさと憤りを覚えた。 でも、こんな話、噂でも一気に広まりそうなのに全然知られてないことを思うと、王家は必死に隠してきたのだと思う。だからこそ今爆発してしまったのだろうか。それでも俺は子供の前ですべきじゃないと思うけれど。 ……でもでも、そもそも本当に皇后陛下は不貞をしたのだろうか。 ただの印象でしかないけど、とても不貞を働きそうな感じには見えない。うちのメイドが「今の陛下たちは大恋愛の末ご結婚なさったんですよ〜」とまるで物語のように話してるのを聞いたことあるし、お互いに想いあっているものだと思っていた。 でも実際、確かにエドワード殿下の髪は、陛下の金髪とも皇后陛下の紫の髪とも違うしなぁ……。 えっと、なんだっけ、メンデル?メンデレーエフ?メンデルスゾーン?誰だったか忘れちゃったけど、前世には遺伝の法則があった気がする。優勢と劣勢があって、両親と違う性質をもつ子って生まれることあったよね? ……でもそれがこのゲームの世界でも通用するのかは分からないし。うーん………。 ん、ちょっと待って???? 陛下が黄色に近い金髪で、皇后陛下は濃い紫。 エドワード殿下は、漆黒と呼ぶにふさわしい黒色。 黄色、紫色、黒色…… ……俺、分かっちゃったかもしれない。 「……あっ、あの……!!!!!!」 思い切ってそう声を出すと、周囲の視線が全てこっちに向く。 もしこの仮説が本当だったら、みんなが笑顔になれる。 注目浴びることなんて少なくて、ドキドキしたけれど。俺はピッとまっすぐ挙手して、「ひとつ思いついたのですけど……!!」と話し始めた。
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