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「このフィナンシェは異国から仕入れたのだけど……」
「(パクッ)……美味しいです!!!」
「このプリンは王宮の人が作ってくれて……」
「(パクッ)……こ、これも!めちゃめちゃ美味しいです!」
ジェラルド様が説明してくれるお菓子を片っ端から食べていくという、至福の時間。
「……ジェリは餌付けが上手いな」
「……えぇ。それにルディはすごく餌付けに弱いです」
兄様たちが何やら呆れ顔で話しているけど、甘いものに思考を支配された俺には全然頭に入ってこない。
スイーツを頬張りながら、俺は今日のお茶会を本気で天国じゃないかと考えていた。
だって、公爵家では一日三つまでと決められているお菓子が、沢山沢山あって、それだけでも幸せすぎるのに。
加えて、隣にはブラッド兄様、向かい側にはエドワード殿下とジェラルド様の王子様兄弟。
アイネム攻略対象三人が揃ってて、視界がそれはもう100万ドルの夜景も逃げ出すぐらい綺麗。もはや美の暴力。タイプの違う三人のイケメンに囲まれて、最高級スイーツを食べる。なんて贅沢。前世の妹に知られたら羨ましいって泣いて怒られそうだ。
「次のおすすめはね……」
一口サイズのプリンを食べ終わった俺を見て、ジェラルド様はまたお菓子を勧めてくれる。そんな俺たちの様子を見ながら、エドワード殿下が不思議そうにあることを問う。
「なぁ、ジェリ。せっかくなのにあれは勧めないのか?」
「あ、兄上!いいんですあれは!」
「「あれ??」」
ジェラルド様が慌てた様子でパタパタと手を振っていて、俺と兄様はなんだろうと首を傾げた。
……わざわざエドワード殿下が言うものなんだ、気になるよね。どのお菓子のことなんだろう!!
そうワクワクしながらジェラルド様を見つめていると、「う、」と詰まって困ったような顔をした後、おずおずと話してくれる。
「せっかくだしと思って、シェフと一緒にお菓子を作ってみたのだけど……」
ジェラルド様の、手作りお菓子……??????
驚いて声が出ない俺を他所に、ジェラルド様は「本当に初心者だから美味しくはないかもしないけど、食べてくれたり、する?」と聞く。
「そ、そんな貴重なもの、俺が食べちゃっていいんですか?」
国最高の神殿に寄贈とか、他国との交渉材料とかにできるレベルで価値があるよ!!!ジェラルド様の!手作り!!
”天使が作った菓子”とか名前つけて国で保管した方がいいのでは?
俺が真面目な顔でそう呟いたら、エドワード殿下はブハッと吹き出す。……別に冗談で言った訳ではなかったんですが。
「うん、ルドルフに食べてもらいたいなって思いながら作ったから、食べてくれたら嬉しいな」
そう照れたように笑いながら差し出されたのは、白くて可愛いメレンゲクッキー。
ジェラルド様が頑張って卵白を泡立てて、ふわふわの雲みたいなメレンゲクッキーを作った……???
その言葉を聞いた途端、可愛いエプロン姿で、鼻の頭にメレンゲをつけて微笑むジェラルド様(少年期ver)のスチルという名の幻想が脳内に流れ出す。
想像して、俺の胸にズキューンと矢が刺さった。それも一本や二本じゃない、大量の矢だ。可愛いがすぎるだろう。これはもう尊い、と言うやつじゃないか?
本当に俺なんかが食べてもいいのか分からないけど、ジェラルド様は期待した目をしていて、俺がそんな視線に抗えるわけも無く。
差し出されたお皿からひとつ摘むと、このまま持って帰って保管したい気持ちを抑え、えいっと口に入れた。
「んんっ!おいひいれす!!!!!」
サクッとして、シュワっと溶けるメレンゲは、甘くて優しい味で、ジェラルド様が作ってると思うと、神々しさすら感じるぐらい美味しい。
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