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「このグループなんですけどね」
そう言って彼女がスマホを俺に見せようとしたとき、静かな部屋に細い声が響いた。
「ふふふふ」
それを聞いた瞬間、俺は全身の血液が凍るような感覚を覚えた。表情は固まり、息を吸うことさえも躊躇われる。
「い、今のって」
俺は小田原さんの顔を見た。今の声は彼女のものじゃない。当然俺でもない。
「……わからないです。ここに女性の霊はいないはずだし」
「いないの? え、だって今……」
「ふふふふ」
「うわああああ」
思わずテレビ台の方へ視線を向けてしまう。
小田原さんが話していた白い服を着た女の霊がそこにいるように思えて、俺は耐えがたい恐怖に襲われた。
「なんなんだよ……なんなんだよマジで」
心臓はドクドクと音を立てて振動し続けている。それに合わせるように俺の体も小刻みに震える。
なんでこんなこと、大学生になれば楽しい学生生活を送れると思っていたのに。
「なんで……俺なんだよ」
あまりの怖さに、俺は床に座りながら涙を流してしまった。服の袖でそれを拭うが、恐怖感は拭えない。
「くそ、もう嫌だ……」
涙が溢れ出てきて、俺は泣き続けてしまう。こんな弱い姿、小田原さんに見せるのも恥ずかしいのに。
そう思っていると、彼女はゆっくりと俺の元へ近づき、後ろから優しく俺を抱きしめてくれた。
「大丈夫。大丈夫だから。私が絶対にあなたを守るから。心配しないで」
彼女は腕を回し、俺を包み込んでくれる。
俺の頬を指で拭う。その指はとても冷たくて、彼女も怯えているのが十分伝わってきた。小田原さんも怖いんだ。それなのに、俺のことを心配してくれている。
「……ありがとう。君も、怖いはずなのに」
まっすぐ見た彼女の目。眼鏡越しではあったけれど、その双眸は透き通っているように見えた。
彼女の目を見ていると、なぜだか恐怖感が和らいでいくようだ。
俺はそのまま彼女の唇を奪っていた。
それに抗うことなく、俺を受け入れてくれる彼女。
その夜、俺たちは一つになった。
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