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「なるほど……どうやらあなたは、お噂通りの方のようですわね。こちらで調べた情報では、何か現実離れした、不可解な事象にまつわる事件などを、得意とされているような節もありましたが。それでも、あなたの探偵としての評価は、『すこぶる腕が立つ』という記載がほとんどでした。あなたに依頼することを決めたのは、間違っていなかったと。そう思いました」
「それは、光栄です」と、俺はデスクから松音に向かって、頭を下げた。
わかってもらえたんなら、それでいい。まあ俺にとっては、目の前にいる「外国映画仕様の、上流階級っぽい、しかも艶めかしい若い女性」の存在も、何か「現実離れしたもの」のように思えるがな……。その時の俺は、まだそんな風に、呑気なことを考えていたのだが。
「それでは、改めて。私の依頼を、受けて下さるかしら?」
俺は松音の問いに、「かしこまりました」と同意した。それがこれから巻き起こる、まさに不可解極まる事件の、始まりだった。
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