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本来であれば、こんなふざけた依頼など即座に断り、早々にお引き取り願うところだが。一清の話を聞きながら、俺にはあるひとつの思いが湧き上がってきていた。それは徐々に俺の中で膨れ上がり、いまや確かな意思となって、確立されつつあった。
……分裂した人格を用いて当家に反抗した上に、都会へと出て行ってしまった娘に対する、「最後通告」か。それは体のいい、「厄介払い」だろう。そんな風に、生まれ育った家に見捨てられ、恋人からは、野望を叶えるための手段として扱われる。この案件に於いて、松音は間違いなく、一番の「被害者」だ。
ならば、俺の「成すべきこと」は。あえてこの依頼を受けることによって、このままでは窮地に追い込まれ、人格が破綻する危険すらある松音を、「救うこと」じゃないか……?
一度俺の中で目覚めたその想いは、消えることがなかった。俺は一清に、宣言した。
「はい。それでは、改めて。あなたの依頼を、受けさせて頂きます」
その宣言が、どんな結末に結び付くことになるのか。その時の俺にはまだ、知る由もなかった。
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