彼の「新事情」(1)

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 だから一清は、当家への「アドバイス」として。「念のために」、竹乃と梅香にも計画を話しておいた方が、より効果があるかも……と、「助言」した。当家は、今の松音を最も知る男の助言として、素直に受け入れたが。それは一清の、「竹乃と梅香を消さないため」の、企みだったんでは……?!  現時点では、あくまで「推測」に過ぎないが。そう考えると、感じていた違和感がなくなり、辻褄が合うように思えた。一清は、松音から跡継ぎ問題を聞き、竹乃と梅香の自我が強まったことを受けて、「もしもの時のために」と、2人の「妹」と交際し始めたと言っていたが。恐らくその前から、竹乃にも梅香にも「手を出して」いたんだろうな。それを当家の計画で「消される」のは、あまりに「勿体ない」と考えた。「小悪党レベル」の奴が、考えそうなことだ……。  しかし、一清の予想以上に、竹乃と梅香が成長し。2人の人格を、松音がコントロール出来ないような状況になりつつあった。コントロールが難しくなることで、自分が「竹乃と梅香とも付き合っている」ことを松音に隠せると思っていた一清には、好都合でもあったが。その度合いが激しくなるにつれ、松音自身の精神が崩壊する恐れもあると思えて来た。……そうか。それに気付いた一清は、そのことも当家に「助言」したんだな……!!  もし仮に、竹乃か梅香が松音より「上位の人格」になってしまったとしても、一清は竹乃もしくは梅香の配偶者になれれば、野見山家の跡継ぎになることが出来る。しかし、松音自身の精神が破綻してしまったら、それもご破算になる……。そう考えて、「先手」を打ったわけか。松音さんの状態は、あまり良くないようです。このままでは自我が崩壊する恐れがあると、当家に伝えた。  それを受けて当家では、「最後通告」のつもりで松音に告げた計画が、「失敗に終わった時」のことを考えた。もしこのまま松音が、跡継ぎになることが不可能な状態になったら、どうすべきなのか。家長である松音の父親が高齢化したことを考えると、一から候補を探すのは難しい。ならば……当家の事情も、松音の事情も知り。当家に入ることを「承諾している」男に、養子になってもらうのが一番いい……!
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