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bondage2
新しいボンデージの試着を終え、俺は満足していた。少々値は張るが腕の良いデザイナーに頼んでいる。今回も生き身の動きを狂わせることのない理想のフィット感で仕上がってきた。関節を邪魔しないしなやかさに加えて適度な締め付け。高級なラテックスの質感、丁寧な縫製。俺の愛する生き身を埋め込むにはぴったりの器である。
生き身の表情は変わらない。いつもと同じように生存するための全てを俺に管理され、呼吸ひとつとっても俺を満足させるためだけにそれをする。
新しいボンデージにも何ら拒否反応を起こすことは無かった。寧ろ、背中のファスナーを上げられ全頭マスクを被らされた時点で下半身を反応させているのだから、随分と生き身生活にも慣れたものである。
さて、古くなった方はどうしようか。
今までは、大抵やって来た男に損傷を負わされ寿命を迎えていたが、今回は見た目にはまだ綺麗な状態ではある。局部の防水性が弱くなっているので、器にはもう相応しくないのだが。
(あの男を呼ぶか)
生き身の、痛みに蠢く姿が好みだと云う男が居る。ラテックスにダメージを与えるのも殆どがこいつの所為だ。暫く出禁にしていたが、こういう時にはお誂え向きかもしれない。
ボンデージの交換時期にだけ招待してやろうか。俺はその男にDMを送った。
モニターの向こうで、膝をつき両手を拘束された生き身が痛みに耐え切れず悶えている。唯一呼吸のできる開口部もギャグを噛まされている為、声に出して呻くことも出来ず、唾液を垂らしてはギャグの隙間から少ない空気を取り込むのがせいぜいのようだ。
ラテックスの皮を通して生き身の敏感な部分を貫通させるには、普通のSM用注射針では無理らしい。モニター越しでも分かる太めの針が生き身の臀部、局部、そして胸部二箇所にそれぞれ何十本と突き立てられている。
まるで生き身の肌であるかの如くぴったりと作られたボンデージは、針の痛みを的確に生き身に伝えているようだ。
大きく染みの出来た局部は痛々しいほどまでに盛り上がり、身動きの取れない生き身が痛みを快感に置き換えようとしているのが見て取れる。
俺は煙草に火を付けながら、その様子をじっと見つめた。
生き身は今、何を思うのだろうか。いや何も考えられないでいるに違いない。鋭い痛みは、次にどこにやって来るのか見当もつかない。
ボンデージの上からでも解るほど硬く尖らせた胸部の先端へ、垂直に打ち込まれる針の楔。背中をしなやかに反らせた生き身は、その痛みを自らより深く受け入れ、脳内で快感へと昇華させている。
これ以上無い美しさだ。俺の最愛の男は、本当に美しく、哀れである。俺は煙草の燃え滓を灰皿に押し付け、哀れな生き身を取り返しに立ち上がった。
Fin.
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