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一
「どういうことだっ!」
こうして罵声を浴びても、嫁である以上、私は、じっと頭を垂れていなければならない。
「……昨夜も、一人で眠るとは」
上座で、姑が溜め息をつく。
「仕方ない。あちらの女に、望みをかけるとするか」
――当主が身罷った。
父親である先代の跡を継いだが、体が弱く、ずっと寝付いていた為、妻も子もいない。
遅かれ早やかれこうなるだろうと皆思っていた。
そして、すぐに、都で官吏を目指していた、弟が呼び戻された。
次男坊、家の足手まといになってはいけないと、弟は、都で身を立てようとしていた。
が、呼び戻されても、一人では戻ってこなかった。
好いた者がいると、共に連れて帰ってきたのだ。
まだ喪明け前の、家の事情に考慮して、近くの里に囲っているらしい。
確かに、今は、妾を表にはだせない。下級ではあるが、貴族と呼ばれている限り、体裁というものがどこまでもついてくる。
それも……。口惜しい。
夫と呼ばなければならない男は、都から妾を連れ帰り、正妻であるにも関わらず、何も言えずに、身分が違うと、ただそれだけで、使用人扱いの日々。
知っている。自分は、この屋敷を維持するため、持参金目当てに、嫁になったのだと。
そもそも、農家の娘が貴族の家に入れるはずがない。
里一番の大百姓、ほどほどの財を蓄えた親は、目がくらんだ。
次は身分が欲しいと、足掛かりに自分の娘を、この家へ嫁がせた。
だからこそ、子供を――。夫が帰って来たのだからと、実家からも急かされていた。
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