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揺らめく蝋燭の明かりが、半裸の若者を照らしていた。 「ほんに美しい。これでは……夢中になるのもわかる」 姑は、息子の妾の屋敷を訪ねていた。自ら、その正体を確かめるために。 「ああ、妾は、男であったとはなぁ」 念には念をと、姑は若者の衣を脱がし、次第を見極めていた。   ともすれば、女かと見間がう面立ちに反して、現れた体躯は若人のそれだった。   きりりとひき締まった体を目にしては、ただ見惚れるしかなかった。 「まったく、あれも、都でなにをしていたことやら」 愚痴も、つい浮き足立つ。  「申し訳ございません」 うなだれた若者の口から、声変わり前の少年のような、なんともういういしい声が流れてきた。   姑からの沙汰を待とうと、覚悟しているようで、心なし震えている。 「ええ。お前が悪い」 姑は、掃き捨てるように言い、意地悪く睨み付ける。   若者は、不興を買ったと小さくなった。 「だって……。こんなに美しいのだからねぇ」 「奥様?」 若者は、驚きの面持ちを向けてきた。   姑は、黙って、前にある輝く肌に指を添わせる。   感触は、えもいわれぬほど心地よい。   男の肌であるが、実に艶やかで、やわらかだった。 「どうした。主人の目が気になるか?」 くすりと笑うと、姑は意味深に添わせる肌に、爪を立てた。   若者はびくりと肩をゆらし、姑の望みに困惑しきる。 「今日から、私はお前の姑。妾とはいえ、お前も我が家の嫁なのだ。そう、姑と嫁が仲良くして何が悪い?」 言って、姑は隆々とした若者の胸に頬を寄せた。その容姿にもまして美しい、男の肌に──。
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