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子供がいれば、離縁にはならない。しかも、男の子なら嫡男としてこの家の跡を継ぐ。   そして、姑にまで、子を産めと、家を守るためだと言われて、毎朝、こうして、前夜のあらましを責め問われている。 夫とどうして契らなかったと、そればかり……。 でも、夫は、妾の所へ通っているのだ。   それを知っておりながら、姑は、また独り寝だったのかと言う。   我が子可愛さ。そして、ただの嫁いびり。いや、私のことは、嫁とも思っていないだろうから、使用人いびりだと言っていいだろう。   今まで、屋敷を一人で、切り盛りしてきたからか、姑の気丈ぶりは、傲慢な性格を生み出していた。 「ああ、もう用はない」 まるで、野良犬でも追い払うように、冷たくされても……、嫁である以上、黙って従うしかない。 「なあ、向こうはそんなに、器量がいいのか?」 下がった嫁の胸の内など露知らず。姑は側に控える侍女に問うていた。  ……それにしても。と、姑は思う。 夜な夜な、自分の息子は取り付かれたように、妾の所へ通っている。   まあ、進んで選んだ女、通うなとは言えやしないが、どうして女を、隠すのだろう。
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