3/3
前へ
/10ページ
次へ
酒杯を交わし、話が弾んでいるようだった。   だが、おかしな事に、男の声が聞こえるだけで、女の気配がまるで伺えない。 もしや……。 ここは、妾の屋敷ではなく、友の屋敷なのかもしれない。   馬引きの男にたぶらかされたか。   いやな予感がよぎった侍女は、広縁によじのぼり、主が誰といるのか確かめようと、窓から中を伺った。   遠目ではあるが、主人の姿が見える。   酒杯を手に、顔を真っ赤にさせてご機嫌な様子だった。   脇には、男が座っている。   そちらもかれこれ酒がまわっているように見えたが、やはり、肝心の女の姿がない。 ここではないのか……。 侍女が落胆したその時、二人は勢いよく床に転がり崩れた。   どうやら、酔いが回ったようだ。 ……だが。 どうして……。 二人は、見つめあっている?
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加