69人が本棚に入れています
本棚に追加
酒杯を交わし、話が弾んでいるようだった。
だが、おかしな事に、男の声が聞こえるだけで、女の気配がまるで伺えない。
もしや……。
ここは、妾の屋敷ではなく、友の屋敷なのかもしれない。
馬引きの男にたぶらかされたか。
いやな予感がよぎった侍女は、広縁によじのぼり、主が誰といるのか確かめようと、窓から中を伺った。
遠目ではあるが、主人の姿が見える。
酒杯を手に、顔を真っ赤にさせてご機嫌な様子だった。
脇には、男が座っている。
そちらもかれこれ酒がまわっているように見えたが、やはり、肝心の女の姿がない。
ここではないのか……。
侍女が落胆したその時、二人は勢いよく床に転がり崩れた。
どうやら、酔いが回ったようだ。
……だが。
どうして……。
二人は、見つめあっている?
最初のコメントを投稿しよう!