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三
「ご苦労であった。ああ、それから、このことは」
「はい。もちろん、他言はいたしません」
――向こうの屋敷に、女はいなかった……。
そんなばかな。
侍女から聞かされたことに、姑は、耳を疑った。いや、息子にそういう嗜好があったと知って、ぞっとした。
侍女は長年側に仕えている信用できる女だ。さらに、細かく息子達の夜伽の様子を語られては、作り事とは思えない。
全く。女ではなく……男を抱いていたとは……。
「では、子は、生まれないということか」
女主人の呟きに、侍女も口惜しそうに頷いた。
「さても……」
跡取りがなければ、家は続かない。これでは、嫁の実家の思う壺だろう。
貴族の身分が欲しいと、娘を送りこんできた。このまま、子ができなければ、養子などと言って、新たな手先を送りこんでくるに違いない。
持参金目当ての婚礼のつけが、ここに来て出たか。
……いや。
だからこそ、子を楯にすればいい。
妾に子ができないなら、嫁に産ませればいい話。そもそも、跡取りは、正妻の子供がなるものなのだ。
そして、向こうの家から、吸い取れるだけ吸い取って。
所詮は、金目当て……。
そうだ、そうであった。
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