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だって知らなかったんだもの
あなたがこんなに素敵だったなんて…
だから私は放っておくことが出来ない
彼が高校生だった頃は苦手なタイプだった
金髪でボサボサ
色白なんだけどいつも俯いてるから表情は見えなくて
背が高いけど痩せてるからすれ違う時も圧迫感はなくて
バイト先のお客さんには
『王子』ともてはやされていたけど
よく見ると着ている服はアイロンがかかってないから少しよれてて
まともなご飯食べてそうになくて
バイト先の店舗のバックヤードで
いつもスマホゲームしてる
そんな普通の高校生の男の子だった
休憩時間に隣に座っていても携帯電話から目を離さないから
邪魔しちゃいけない気がして話かけたりもしなかった
仕事が終わったらさっさと帰るし
たまにみんなでごはんを食べに行っても、ゲームをしない私とは話が合わないから隣にいることはない
ただ一度、忘年会で悪酔いした店長を店舗兼寮代わりの部屋に彼が連れ帰るのを手伝ったことがある。
体の大きい店長を二階まで引っ張りあげるのは二人でも大変で
玄関で靴を脱がせるなんて芸当は無理で
寝室のベッドに横たえた後、なんとか足から外して
厚い布団を被せたら
ホッとして、どっと疲れが出て体が動かなかった。
遅い時間で終電もなくなっていたので
勝手だが二人でそのまま店長の家に泊まることにした。
寝室の他は備え付けのキッチンとローテーブルとテレビとクッションが置かれた部屋しかなくて
彼が静かにゲームをする横で
本当は私も眠りたかったけど
来週が締め切りのレポートが気になって
鞄からタブレットを出して見直していた。
途中でうとうとしていていたのは覚えてる
でも朝起きたら座った位置のまま床の上で
抱きあって寝ていた。
服を着たままだし
多分温かさを求めての結果だったんだろうけど
彼の肩に両手を回して
彼の首筋に頬をあてて
体を寄せた状態で目が覚めた。
本気でびっくりした
今までそんな事を誰ともしたことがなかった
私が先に起きたから彼は気づいてないかも知れないけど
もう電車は動いていたから
心臓はバクバクうるさかったけど
彼らを起こさないように
静かに家を出て行った
それからわりとすぐ彼はバイトには来なくなった
受験まで日も無かったから勉強に専念したいと辞めたそうだ。
だから彼と再会するまでは
関りあうことは、もうない、と思っていた。
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