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息抜きに春になるまで働いていたバイト先に遊びに行った。
その日は店の客足が途絶えなくて
バイトのメンバーも少なくて
友達の上がりを待つつもりが自分もシフトに入ることになった。
どうやらうちの大学の親睦会が行われているようだ。
学部が違うせいか、もしくは学年が違うせいか
知り合いがいないな、と思いながらオーダーを取っていたら、中に見知った顔がいたような気がした。
ふと視線を感じて顔をあげると
綺麗な顔をした男の子が私を見ていた。
あの時の男の子だった。
店長が、酔っぱらった日に二人で
運び込んだ
少し雰囲気は違っていたが彼に間違いはないだろう。
そうか大学生になったんだね。
店長にきいたら最近は何回も来ているらしかった。
あの時の事を思い出すと今でもドキドキする
あの人のゼロ距離にいたんだな
今は全然赤の他人だけど
彼はバイトの時と違って
仲良さげに周りの人と話していた。
髪は綺麗に揃えられていて
眼鏡をかけていた
服は前よりはおしゃれになっている気がする。
『王子、来てる。やばいよね』
『いやもう今日最高に幸せ』
彼から離れた場所にいるのグループの女の子達が話していた。
『さっき話してた王子のモデルの、ほらこのSNS』
携帯をタップして
『うわ、カッコイイ、共有してコレ』
『ここって駅前の古着屋さん』
『時間かからないしワリがいいバイトって言ってた』
『そりゃ買いに行くよ、これ見たら』
『このネルシャツ、可愛い』
『欲しいな、まだあるかな』
その時後から店長の声がした。
『まかない作ったから休憩室で食べてきて、15分休んでいいから』
『ありがとうございます』
まかないが出るということはラストまで働くということか。
友達と顔を見合わせた。
今夜は遊びに行けそうにないな。
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