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賄いから戻るとしばらくして須藤君は店内に戻って来た。
店が閉まる前に買い物をしてきた、と話しながら椅子に座った
彼らはそれから二次会に向かうようだった。
私はその夜は友達と遊びには行けず
もう夜も遅かったから、須藤くんと話したことを報告しただけだった。
『えっ王子、上に上がってきたの?』
就業後、店長に呼ばれるとたい焼きの入った袋を渡された。
『須藤くん、エマちゃんの賄いを食べちゃったから渡して欲しいって、レンジで温めといたから食べながら帰りな』
ホカホカの鯛焼きは二つあったから友達と一つずつ食べた。
店のすぐ近くにある有名な鯛焼き屋さんだ。
中身は一つはつぶ餡、もう一つはカスタードクリームだった。
一緒に遊ぶ筈だったひなちゃんと駅に向かいながら分けて食べる。
もう遅いから話す時間があまりない。
『王子来たわけ?休憩室に?』
『そう、なんかびっくりして』
『なんで?』
『…なんでだろ、あっそううちの大学に入ったって』
『あっそうか、今日の店の予約の名前、うちの大学だったね』
『そう』
あの時の王子の笑顔は破壊的だった。
直視するのが難しい位だ
まばゆいってあの事を言うんだろうなあ。
一緒に働いている時は見たことなかった。
あれは誰でも落ちるだろうな
鯛焼きはいつもと同じ味の筈なのに
彼にもらったというだけで、すごく特別に感じた
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