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プロローグ
――8月31日。私は、この夏休みにあった出来事をずっと忘れないように、ここに書き記しておこうと思う。
私が、私のことを大嫌いだったあの夏。出会ったのは忘れもしない、終業式が終わった日。私の中にある言葉をいくつ組み合わせても表せないくらい綺麗なその子は、堤防に座ってた。
澄んだ濃い青空にその深緑色の髪は靡いていて、炎天下に似合わないくらいに、真っ白な肌。
……思い返しても、きっと私の言葉なんかじゃいい表せないだろうけど、いつ見ても思い出せるように、色褪せてしまわないように。頑張って書こうと思う。
――まるで砂浜にあるすべてのシーグラスをかき集めたような鱗に、太陽の光をステンドグラスのように透かしている、びいどろのような大きなヒレ。
私はその子を見たとき、瞬きすら忘れてしまった。
――そう、あの夏。私は人魚に出会ったんだ。
これはきっと誰にも信じてもらえないだろうから、この日記と。――私だけの、大切な秘密の夏の物語にしよう。
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