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「陶子、とにかく身体を大事にして」  何よりもあなたが大切だから。  まだ見ぬ孫を楽しみに思う気持ちもありはするが、それも娘が健やかであってこそ。 「お仕事もあるけど無理しないようにね。手伝えることがあったら何でも言ってちょうだい。もうお母さん毎日暇だから、呼ばれたらいつでも行くわよ」  思い立てばすぐに訪ねられる距離に居を構えていてくれてよかった、と今更のように実感する。  このままの勢いで駆けつけたくなるが、陶子には陶子の家庭があるのだ。いつまでも親の庇護下ではない、もう大人になった娘。  ……寂しく思うのはあまりにも勝手過ぎる、と頭ではわかっていた。 『ありがとう、お母さん! 崇ちゃんも普段から家事やってくれてるし、できるとこまで二人で頑張ってみる。でもダメだと思ったら素直に頼るから、悪いけどその時はよろしくお願いしまーす』  陶子には崇文という伴侶もいる。子どもが生まれたら、『娘』は『母親』になる。  それでも悦子にできることもまだあるのだ、と自然に頬が緩むのを感じた。  ──陶子に対して、親である自分にしかできないこと、はもうないかもしれないけれども。                               ~END~
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