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「お母さん、私ダイエットするの! ごはん減らしてね、おかずもカロリー低いの少しでいいから!」
高校生。
体型を気にする年頃だというのは、母である悦子自身の経験上もよくわかっている。だからとりあえず好きにすればいい、と思ったのだ。
我が娘ながら根気のない陶子が、そんな我慢を続けられるわけもない。どうせ「明日から! 明日から頑張るぅ〜」と無意味な言い訳をしつつ食べ出すのは目に見えている、と高を括っていた。
しかし、ただ笑っていられたのは初めのうちだけだった。
「ちゃんと食べなさい! ダイエットなんて──」
母の心配の声は、娘には雑音としか受け取られない。
かえって頑なになり、食事制限をエスカレートさせて行く陶子。
歪なフィルターの『向こう側』で鏡の中の痩せ細った身体に喜ぶ娘は、まるで別次元に居るかのようだ。
間違いなく同じ空間に存在するのに、手も声も届かないもどかしさ。
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