BAR『かげろう』

10/10
前へ
/10ページ
次へ
 しかし、次の橋を渡りつつある1台の車があり、その助手席にいた婦人が、川に飛び込む少年を見ていたのだ。  少年は川に流されながら気絶していた。  この二人は、N電機の社長夫婦で、たまたま東京に視察旅行に来ていたのだった。  彼女は、運転していた夫に車を止めさせ、その少年を救い上げた。 「どんな理由での行為か分からないけど、きっと大変な事があったのでしょう‥‥」  実は、その夫婦には子供がいなかったので、 「この子を私たちの子供にしましょう」 「こうなったのも何かの運命だろう」  と夫も了承した。  二人は少年を車に乗せると、走り去って行った。  その光景を見ていたBAR『かげろう』のマスターは、 『私にしかできないことが役に立ったようだ』  数日後、夫婦は夫の仕事関係の部下から電話が入り、元気になった少年を連れて大阪へ向かった。  ――おわり――
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加